実録:怪しい投資セミナー 潜入レポート24時

始めに伝えておきます。本文中に登場するバーの人物(メーテル)は、後に逮捕され、実刑、懲役となります。

今回はそんな人物とマジに出会った冒険の一部始終を注意喚起も込めてレポートします。

※私はこの逮捕者を含め本文中に登場する「主催者」以外の人たちを避難する意図はありません。むしろ全員いい人ばかりです。参加者は自分が被害者であるとも加害者であるとも思っておらず、素直で、夢があり、親切で、身を粉にして頑張っている人達でした。ただし「主催者」は別です。主催者は全てを知っているはずで、その責任もあると思うからです。

せっかくの冒険記なので久々に小説風に語ります。

土曜日、

投資家のお休みサタデー。カウンターで飲んでいると、ひとりの人物が私の2つ隣の席に着いた。

「出不精」「社会性欠如」、専業トレーダーのデメリットであると同時に私の性格であるこれらの疾患を改善すべく訪れた週末のバー。この人物の来店によって冒険の幕は静かにロールアップしていた。

投資家を自称する彼はメーテル(仮名)と名乗った。スタンド同士は引かれ合うというが一般人が外で投資家に遭う事はほぼ無い。投資家同士はさらに無い。一人ぼっちの私は嬉しくなった。
サラリーより資産が重要な理由、勝つ事は予定できない事、波のなかで自分を安定させる事、期待値、メンタル、運、孤独、規律、などのワードで意気投合し、ついに共感できる知人ができた喜びに興奮していた。無口な私もFX話ならエンドレスだ。

AM3:00

帰ろうとする私をメーテルが引き止めた。LINE交換したいという。私は喜んでOKした。日頃誰とも交換することなどないのだ。“これが友達追加か” 内心ドキドキしながら平静を保つ私にメーテルが言う「今日は楽しかったです。実は明日、大規模な裁量トレーダーの投資セミナーがあるんです。僕も参加するつもりなんですが、ぜひ一緒に参加しませんか。他の投資家達も集まります。友達もできるかもしれませんし」

ト・モ・ダ・チ?これが友達の輪というヤツか。こうして人々は友達を増やしているのか。しかしこの時点で怪しさが頭を走ったのも事実。“これって典型的なヤツ??”。
だが時は土曜日朝3時。小さな樽がなくなるくらい飲んでいる。なんだかほんわかして気持ちいい。今日が土曜で明日は休み。初めての投資家。初めての友達。怪しいセミナー。投資家いっぱい。私はアルコール燃料で頭をフル回転して答えを出した。“ま、いっか”。メーテルが店のマスターとも面識がある様にも見えた為、考えすぎだろうと自分を納得させた。それに、サタデーナイトはフィーバーしてもいいはずだ。

メーテルの言葉には淀みがない。むしろ彼が騙されているんじゃないかとさえ思えた。私も投資家、リスクテイカー、虎穴に入らずんばなんとやら。駄目で元々。ダメならダメでブログのネタにしいてやるさ。良ければ良いでそれでいい。最終的にそんなメンタルで眠りについた。

日曜日、

ハイチオールCを朝食代わりに新幹線に滑り込む。余談だがハイチオールCは二日酔いに効く。成分表示にも書いてある。二日酔いを直してシミまで治すとはハイチオールCの重責たるや頭が下がる。

あえて伏せるが、会場は日本第三の都市のとあるホテルの大会場。投資家セミナーは午後2時だが、その前にメーテルと落ち合って昼食を取る約束だ。“これがトモダチとランチというヤツか__”

ランチにはもう一つの目的がある。メーテルの知り合いの投資家一人との顔合わせだった。メーテルが紹介役になってくれる。

12:00 もう一人の投資家

地元名物のある飲食店で待ち合わせ、3人が顔を合わせる。メーテルの知り合いの彼の名はハーロック(仮名)。私と同じく大金ではないが数年前からFXで生計を立てているという。始めに言っておこう。ハーロックはその後集団訴訟される。メーテルとは別の容疑だ。今思えばそんな2人に囲まれてた訳だ。だがこのときの私は知る由もない。ハーロックもメーテルも人当たりが良く悪人にはまるで見えない。ただただ目の前の名物がウマかったという印象しかない。しかし直後、軽い衝撃を受ける事になる。ハーロックが一杯飲みましょう」というからだ。「今から!?」「この後説明会ですよね」「それ以前に昼ですよね」。慌てる私をよそにハーロックは大真面目。「一杯だけなら大丈夫でしょう」と。確かに今日は日曜日。昼から飲んでも良い日だ(そうなの?)。昨晩浴びるほど飲んでる私は少々戸惑ったが1本だけなら、と共にした。胃の中でハイチオールCが慌てる顔が目に浮かぶ。

14:00 入室

満腹ほろ酔い3名がホテルの大会場に入る。参加者は80~100名くらいだろうか。参加名簿に私の名前を書き入れるもセキュリティによって登録がないと言われる。メーテルが自分の紹介である旨を伝えて事なきを得る。メーテルは主催者に近い立場の人間なのだろうか。

まだ開始前。後ろのテーブルに一人の女性がエレガントに着席する。彼女の名はエメラルダス(仮名)。メーテルとハーロックとも知り合いだ。株専門の投資家だが知見を広げる意味で様々なセミナーに参加しているという。エメラルダスを含んだ4人でセミナー開始までの間雑談。エメラルダスもハーロックも投資関連の知識は高く、特にエメラルダスは株専門という事もあり私の知らない単語や情報が会話に多く含まれた。

また、本セミナーには不参加だったが、彼らの話に出てきたファウスト(仮名)という人物は特に卓越しているらしく独自のアービトラージプログラム(裁定取引)を組んで利益を上げているとの事だった。内容を聞いたところ業者規定ギリギリの線だがおそらくセーフだろう。少なくとも違法ではない。自作プログラムを用いたトレード仲間という意味でファウストと話がしてみたいと思ったが残念ながら今回は叶わなかった。

周りも全員このレベルだろうか。だとすれば期待が持てる。それともメーテル周辺のコミュニティカラーだろうか。

開幕

後でこれがチャンスだったかどうかは行動した者しかわからない。そのチャンスの種にさえ気づけない事さえ多い。もし本当に良い情報なら自分の手法に応用したり、自分が試して結果が伴えばブログ・メルマガ読者さんにもシェアできる。怪しさのある分、興味も高まる。テーブルにノートを広げて開始を待つ。些細な情報も見落とさない構え。真剣スイッチは入った。

突然、会場が真っ暗になった。出入口を締め全カーテンが閉められ室内の照明が落とされたからだ。

BGMが流れ、暗室となった会場のスクリーンにプロジェクターが照射される。どうやら誰かのメモリアルアルバムのようなもの。バーベキュー、リゾート、豪華ホテル、プール、海、楽しむ色黒の男たち。それらが編集された映像音楽で20分くらい続いただろうか。。

私は思う。「投資の話じゃない」

素敵な自慢VTRを見させて頂いた後、本人ご登場による映像の解説が行われ、自慢話は30分追加された。

その後5分の休憩を挟み、ついにFXの話になる。これがある意味驚愕の内容だった。「FXの市場規模」「ロング、ショートとは何か」「FXはなぜショートができるのか」「レバレッジとは何か」「ドル/円とはどういう意味か」「どのように注文するか」など。基礎と呼ぶのも気が引ける。ネットを見れば誰でも判る。解説された全ての内容は今や小学生でも知り得る情報の坩堝(るつぼ)であった。

「知らない方の為に、」と前置きはされてはいたものの、この話は1時間続いた。私は退屈。眠たい。ノートは白紙。書くことが無い!。“このセミナー、このペースで大丈夫かな?”と少々心配になり隣のメーテルに目をやると、意外にも真剣な眼差しで傾聴していた。キリッと姿勢もいい。私は自分が恥ずかしくなった。まだ前提の話しかしていない。これを踏まえて本題が待っている。せっかちな自分の悪いところが出ていると反省した。昨日も今日も飲んでいる。眠いのは自分の都合じゃないか。私は襟を正して集中力をキープした。

16:00 手法と価格

前半終了後に15分休憩を挟む予定だったらしいが前半が押してまったという理由で5分間に短縮された。“いや自慢映像!あれいるぅ?自慢話も。”もっと短縮できたでしょうに。

ついに本題。

進行役が司会を進める。相変わらず派手な導入シーンは割愛するが本件のあらましはこうだ。

クリックで表示
  1. 海外で爆発的に利益を生む最新投資ロジックが完成
  2. 本年そのロジックがもうすぐ日本初上陸
  3. 先駆者になる絶好のチャンス
  4. このロジックはスマホアプリで提供する
  5. アプリ価格は10万と30万の2種類
  6. アプリの使い方
    ・海外100人以上の登録済投資家のリアルタイム勝率、成績を一覧できる
    ・成績好調な投資家のロジックを選んで投資
    ・扱う投資商品はFX及び仮想通貨

なさそうな話でないどころか、この手の投資方法は、ある。いわゆるコピトレ、コピートレードの類だ。複数の投資家あるいはシステムを外ウマの様に選択する事で、投資知識が無くとも投資に参加できる投資手法だ。シストレにおいては複数ロジックの中から最適なもの常時入れ替えて運用する方法は基本ですらある。

相違点があるとすれば、アプリで勝率を確認して実際に売買するのは自分のブローカーから行うという点か。確かにこれなら、為替、仮想通貨、ブローカーに制限される事なく自由に自分の裁量で運用できる。

しかしここで言う裁量とは裁量トレードの裁量ではなく、投資の裁量という意味。トレードに一切のスキルは不要なのだから裁量トレードではない。この点を私は質問したところ、驚きの答えが帰ってきた。

「アプリ内の投資家から公開されるシグナルはエントリーロング/ショートの別のみ。決済(EXIT)は各自の裁量となります。ここが腕の見せ所です。チャートを読む知識があれば裁量次第でより多く勝つ事もできます。勝率80%以上の投資家を選べばチャートが読めなくても8割は勝てます。」

利食が裁量なのはまだいい。しかしストップロスが完全裁量なのはいかがなものか。エントリーだけならエテ吉でもできる。確かにSLの設置自体は多少のチャート知識があれば置く事ができる。もし自分がこのアプリを使うならSLを自分で決めるのにも問題ないだろう。しかし何かが引っかかる。

アプリの話はこれで終わらなかった。最後の小休憩を挟んで、いよいよ本丸の話になった。

アプリの実態

あからさまにここからが本番ですと言わんばかりに主催者・進行役の熱量が上がる。チャラチャラした雰囲気はもうない。

アプリの実態はこうだ

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  • このアプリを他人に紹介すると紹介料が入る
  • その利用者が他人に紹介するとその紹介料の一部が入る
  • 自分も利用者もアプリ購入代金は紹介料で相殺できる
  • 自分の紹介から派生した紹介グループは自分の利益になり、人数や期間によって収益率が良くなるランクアップシステムがある
  • 10段階あるランクの内、3段階目のランクから一気に報酬率が上がるので、その条件である20人のグループをまず作るのがお得
  • ネズミ講ではない
  • その他、難解な話多数(紹介システムは非常に複雑で全体を理解するのは困難だった)

うん、もう投資カンケーねー。

どこが裁量トレーダーやねん。トレード要素どこ?そう考えていると進行役が会を仕切りだした。

「それでは表彰式を始めます」何やらセレモニーがあるらしい。

進行役に呼ばれた者が一人ずつ壇上に立ち、表彰された。表彰内容は『アプリを紹介して稼いだ人』だった。詳細は割愛するが「○百万円稼いだ」「○ヶ月で達成した」「僕はこんな方法で紹介グループを作った」などなど。金額や売り方などかなり詳しく赤裸々に語られ、それぞれに大きな拍手が送られていた。

私はメーテルを心配した。彼はトレーダーだ。「日曜日に投資家のセミナーがあるんです。僕も行こうと思っているので一緒に行きませんか」と屈託ない表情で私を誘ってくれたメーテルは、今日このような話になるとは思ってなかったはずだ。裁量トレーダーの内容から離れていく話の内容に、私を誘った事を申し訳なく思っているかもしれない___、

その時、事件はおきた。

進行役:「では次、メーテルさん」

 

! “メーテル、おまえもか。”

メーテルは壇上に上がると他ランカー同様に振る舞った。いやそれ以上に稼いでいるからこの順番で呼ばれた。”彼は主催者側の人間?”あの時の思いは半分正しかったのだ。

私は驚きとともに少し悲しくもあった。だがメーテルの壇上での語りは土曜のバーの時から変わらない人間性に見えた。誰かを騙したり陥れたりするような態度や表情には決して見えなかった。親切で丁寧。礼儀正しい。
しかしいろいろ解ってきた。私は。私たちは。連れて来られたのだ。私たちにこのアプリを売るだけでなく、このアプリを勧誘する側の人間にする為に、メーテルに選ばれたのだ。メーテルはスカウトだ。あるいは、ヒドい言い方をすればここは加害者製造所だ。そして製造された加害者は自分が加害者だと気づいていない。むしろ善意で勧誘している。お金も儲かる。人にもお金を儲けさせてあげられる。本気でそう信じているように見えた。テーブルの参加者達の多くは壇上の主催者を教祖を見るような目で見ている。教祖の些細なジョークに大爆笑している。目がハートになっている。ここはヤバイ。そう思って私がハーロックにアイコンタクトした時、

進行役:「では次、ハーロックさん」

“あんたもかぁーい”

ハーロックは壇上に上がるとメーテルの数倍の成果を報告し会場の喝采を浴びた。“ほんでおまえの方がすごいんかぁーい”そう思うとすぐにエメラルダスの事が気になった!まさか!私が振り向いて後ろのエメラルダスに話しかけようとすると!

エメラルダス:「へー、みんなすごいんだねぇー、やってみようか迷っちゃうねー」

“おまえはちがうんかーい”、「あなたは違うのですね」という言葉を飲み込みつつ、「そうですね、すごいですね」と言うに留めた。

 

つづく


メーテルと知り合ってまだ17時間。今思えば、出会ったのが土曜でなければ違った結果になっていたのかもしれません。

次回、セミナー後に開催された主催者参加者合同飲み会潜入と その後の参加者

 

最後まで読んで頂き、ありがとうございます。

 

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