実録:怪しい投資セミナー 潜入レポート24時 完結編

前半からのつづき

※既に前回をお読みの方へ:申訳ありませんが、前回の登場人物の名前を全て一新しています。恐れ入りますがおさらいも兼ねて確認の為再読いただけると幸いです。

本番

17:00 セミナー終了

衝撃的な余韻が残る大都市の一室、このセミナー会場の使用時間が迫っているとかで急いで退散する事になった。”いやだから自慢VTR!それにあの超初心者情報。あれ省略できたなぁ~”

この後、希望者のみ飲み会があるという。主催者いわく「この飲み会こそが本当の本番。オフィシャルで言えない事を聞き出すチャンス。交流はリソースです。強制でないがぜひご参加ください。」

はっきり申し上げてアプリの仕組みには1ピコミリメートルの興味もございませんが、ここまで来たら会の全貌を確認するのも私の務め。はるばる新幹線で来てるんだ。全て潜入して帰ろう。ここから見るものこそが、真の「虎穴(こけつ)」である筈だ。

自由意思で約半数が飲み会参加に手を上げた。季節柄、周囲はもう薄暗い。飲み屋さんまで全員徒歩。40名がかれこれ30分ほど歩いている。慣れない旅行もあって既に腹ペコ。大所帯の烏合の衆が間隔を空けて歩くため、後方の私から列の先頭は見えない。“一体いつまで歩くんだ。ひょっとするとこのままカニ漁船?それじゃほとんどネズミの集団自○だな”そんな事を思っていると、店の入口で団子になっている先頭集団に追いついた。どうやらこの店のようだ。私「すみません、このお店ですか?」、参加者A「そうみたいです。やっと空いているお店があって良かったですね」“いやトビコミかーい。40名だよ!?、予約なし?、大所帯だよ?、OKする店よくあったね??”。参加数未定だったとはいえ、会場を出る前に電話確認くらいできた気がしますがどうでしょうか主催者さん。

18:00 飲み会

既に夜空。物置や休憩場と化していたらしい大部屋座敷を店員さんが慌ただしくセッティングする。部屋の準備が終わり乾杯のビールが揃うまでしばらく待つ。無理もない。生10杯で5lの樽は空く。日曜とは言えいつものバイトシフトのはずだ。40名のノンアポはトビコミというよりカチコミだ。

本記事で「主催者」と述べてきたがここからあえてプロメシュームと呼ぼう。ひとりだけ名前がないのは可哀そうだ。
司会の挨拶が終わり、プロメシュームのモチベ話「次回の上位ランカーはドバイ旅行へ一緒に行きましょう。前回は〇〇でしたね。」も手短に終了。

乾杯を済ませた後はプロメシューム自ら全席を回って参加者一人ずつ質疑応答と交流を同時に行う。1人と3分話すとしても120分かかる計算。その間、他の参加者同士は名刺交換や交流を深める。そんな流れだ。

私の番までまだ長い。メーテルは名刺交換に忙しく、昔見たゲームウォッチのキャラの様にせわしく四方に動いている。エメラルダスは家事と仕事がある為この飲み会には出席せず新幹線で帰った。記憶が確かなら彼女はシングルマザーで昼も夜も働き、その合間をぬって投資を勉強し、さらに各地のセミナーに参加しているとの事だった。私やハーロックのように投資専業で生活している者は少なく周囲から注目された。

参加者

正直、飲み会が始まる前までの私はだいぶ身構えていた。つまり周囲を信用していなかった。しかし席付近の参加者と話を交わした印象は興味深かった。みな一様にいい人たちだ。それに苦労人だ。極度の上がり症を克服する為にナンパ1000人した男。ユーチューバーを目指しているがカネもコネもなく1から勉強しながら各地で人脈を増やそうとしている人。「田舎の山の落ち葉が高額で売れるんです。商品を持っていないので落ち葉を拾って売る事を考えています。」と語った初老の男性。

 

共通していたのは、みな純粋で素直そうに見えたという事。そして真面目にコツコツこなすタイプにも見えた。あくまで初対面でしか無い私の印象だが、私の席の周りに攻撃的な人や嫌な感じのする人は一人もいなかった。むしろ私一人が周囲に対し壁を作っているようにも思われた。

長らく待った料理が運ばれる。それもそのはず40名のカチコミだ。腹ペコMAX。この際割り勘勝ちするほど食ってやろう!待ちに待った食べ物がテーブルの真ん中に大皿に溢れんばかりにてんこ盛り!その料理は!地元名物だ!
“あぁ、神様、それはお昼に食べました。。orz”良く考えれば当然だった。地域から集まった参加者にホスト役が地元名物を選ぶのは、正しい。

プロメシューム

そろそろ酔いも回ってきた頃、ついに私の席にプロメシュームがやってきた。ちなみにハイチオールCの後光はとっくに切れている。実のところ大した話をした覚えはないのだが、後でメーテルから聞いたところによると「ずいぶんプロメシュームに絡んでましたね。あんな事言う人初めてですよ。周りもけっこう引いてました」との事。

私はセミナーの自慢映像に苦言を述べた後、アプリの手法で「損切が裁量」になっている点で初心者に優しいとは言えない旨をそのまま伝えたのだ。その事で周りがなんか焦っていたらしい。

だが、おぼろな記憶の中でひとつだけ強烈な印象が今も残っている。それは、オーラ。それも凄まじいオーラ。人からオーラを感じる事などほぼない。人生で多くのカリスマに遭ったり見たりした事はある。それでもオーラがどうのこうのはない。私は霊感カンペキノーセンス。カリスマ性は感じてもオーラまで感じた事はない。しかしプロメシュームが隣に座った瞬間からビリビリと心臓の周辺一帯が収縮、圧迫されている感じがした。まだ何も話していないのに。隣にいるだけなのに、だ。周りの空気は薄く感じられ、ピリピリした緊張でできたシャボン玉の中に入っているようだ。これはプロメシュームが席を離れるまで続いた。無論、話している間もずっと続いた。ヒトラーは演説の際カリスマ性を高める為に人間の耳に聞こえない周波数の重低音をスピーカーで流し聴衆をコントールしていたと聞いた事がある。プロメシュームも何らかの器具を用いているんじゃないかと思ってしまう程にビシビシ感じるものがあった。もちろんそのよう器具など使っていないはずだが、プロメシュームのスタンド「ザ・カリスマ」を感じた今、セミナーでの教祖扱いも合点がいく。参加者の殆どは2回目以上の参加だという。何らかの媒体でプロメシュームを知っている人達だ。すでにプロメシュームのカリスマの元に集まった人が多いのだ。

飲み会こそ本番、それは本当だった。参加者同士の情報交流と人脈作り。しかし本当の本番はプロメシュームによる直接関与。くどいようだがプロメシュームの直接攻撃は凄まじい。まるで近くで太鼓を鳴らされて続けているような或いはフェスで大音響を全身に浴びるように、自然と鼓動が高まり体を動かしたくなる衝動。私のスピリチュアル性能はノーセンス、それどころかノーテンキ。昨日からのアルコールで表情ユルユル。アホみたいな顔してます。アホです。はい私はアホでございます。そんな私がプロメシュームが近づいた途端に“こいつはヤベー!このままじゃ殺(や)られる!”とビッと姿勢を正したのです。思えばこの反作用にも似た対抗反応がメーテルをして「ずいぶん絡んでた」と見えたのか。

繰り返しになるがハイチオールCの切れた私の記憶はバードクラスだったかもしれない。しかしその中でさえ強烈に印象に刻まれたのが、プロメシュームのオーラ参加者達の人柄の良さだったのです。

21:00 ロールダウン

メーテルはそんな私の新幹線の切符まで手配してくれた。終電間際の新幹線に乗り、冒険の24時間は幕を閉じた。

 

後日譚

その後数週間

メーテルからその後何度かメールがあったが、トレードの話ではなく、集客方法のそれだった。申し訳ないが、私がそっけない態度で流した事もありメールは減っていった。

数カ月後

久々にメールが来た「今だけ。ワンボタンで勝てる勝率9割の___」文頭の挨拶も何もなく1行目から宣伝メールだった。明らかにコピペ。私は悲しくなった。このメールを見て誰が“わぁ~、ヤリィ~!今すぐクリックしよ~♪”、と、なるのか。あの時トモダチができたと喜んでいたが、彼にとっては私もただの顧客に過ぎなかったのか。そんな思いでガン無視した。

1年後

更に1年後くらいにメールがあり、今度は「お久しぶりです。」から始まるトモダチライクな文面だった。「近くに寄る用事があるので仕事抜きで一緒に飲みませんか。トレードの近況でも話しましょう。」言葉通りに受け取れば断る理由はなかった。メーテルと居酒屋でサシ飲みした。

居酒屋であのアプリのその後の話を聞いてみた。メーテルは自分で使うに留めその後は集客していないという。アプリで勝てないというクレームが相次いだからだと。しかし自分自身は仮想通貨で数百万の利益が出せているという(本当かどうかわからないが)。一方ハーロックは大々的に紹介してしまった為、多くのクレームを抱えトレードに支障をきたすほど疲弊しているという。あの時周りから言われるがままに人に勧めなくて本当に良かったと思う。もちろん私自身もあのアプリは購入していない。結局クレームは直近の紹介者に入るので、頂点のプロメシュームはクレーム対応に追われる事はない。そういうシステムなのだろう。

ただ、細かい話は聞いていないが相変わらず何らかの集客は行っているようで、トレード話もそこそこで、おそらく今回でもう会う事はないだろうと感じた。

1~2年後

メーテルのモの字も忘れかけた1~2年後、メーテルからメールが来た。「しばらく懲役になるのでメールアカウントなどを閉鎖し今後は連絡が取れなくなります」との事だった。最後の居酒屋の後から一切連絡は取っていなかったのに。なぜそこは律儀なんだ。前回の居酒屋の時に知ったが、彼には前科があり執行猶予中だったらしい。それが今回実刑になったとのこと。つまりなんかやらかした。その一連について聞くと「共同経営で裏切られた」「名義を利用された」「違法だと思っていなかった」との答えであった。本当のところはどうか知る由もないが、こうして律儀に連絡してきたり逃げ隠れせず飲みに行ったりするところを見ると、これまで雲隠れしたり音信不通になることはなかったので、彼は彼なりに自分に素直に生きているのかもしれないと思った。

その後彼らがどうなったか知らない。社交的で何にでも興味があり頑張りやさんに見えたエメラルダス。「一杯だけならいいでしょう」といたずらっぽく笑った顔が印象的なクールで落ち着いた雰囲気のハーロック。「こんど仕事抜きで飲みましょう」と私を誘ってくれた礼儀正しく人懐っこいメーテル。恐怖のオーラ人間プロメシューム。会うことはなかったが卓越したアービトラージのファウスト。その他、大変な状況の中でもできることを見つけ夢を目指していた、飲み会で会った努力家の人たち。今どこで何をしているか知らない。ただ、何か別の方法で資産を築いている可能性はあると思う。その根拠は行動力。理想はあっても動かなければ成就しない。道は近くとも歩かなければ到達しない。あの時のセミナーは不発に終わったが、それでも彼らは行動した。社会に不満は発信するが自分は行動しない人もいる。そんな中彼らは藁をすがる思いで行動したのかもしれない。行動を続ければ失敗も増えるが成功のヒット率も増す。今回の失敗が糧になれば良いと思う。もちろん正攻法で。私も長い間トレードで泥水を飲み続けた。トレードだって、続けているからたまに大きなチャンスを得られる。そう考えると本質的には同じなのかもしれないと、考えさせられた。

 

前科・懲役を知って

それでも私は彼らを責める気にはなれなかった。実際に会って話した印象からだ。この体験記を読んで嫌悪感や恐怖心を持った人もいると思う。私も最初は、ネズミ講の信者みたい、と不審に思っていたが、会って話せばみな純粋な人たちだった。あの人達はただ利用されたのではないか。そんな風に思っている。しかしプロメシュームは違う。プロメシュームにはカリスマ性があり集まった人たちを導ける立場だった。しかし光を与えているようでその実、盲目的にさせている。華やかな生活を見せて希望を抱かせ、簡単な説明で誰でもできると誤解させ、アプリを使えばスキルもいらないとうそぶいた。プロメシュームがどのような素性で、どのような経歴があるのか知らない。本当にすごい人物なのかもしれない。裏で孤児院に寄付しているかもしれない。それでもやはり今回私が体験した限りでは紹介の仕方は良くなかったと思う。あれは投資の話ではない。投資家セミナーではない。アプリ会社のアプリ代理販売セミナーである。無論、プロメシュームでさえ本家のアプリ企業の歯車でしかないのかもしれないが、私がこれ以上この手のセミナーに首を突っ込むことはないので、それより先の事は解らない。

また、そのアプリ販売について否定するつもりもない。違法でもネズミ講でもないのであれば、利用したこともない第三者が文句をつけれる立場でないかもしれない。エンタメツールと考えてもいいし、実際に勝つ人もいるでしょう。ただ、投資の話と言っておきながら、紹介制アプリに移行するのはどうかと思う。始めから紹介制のスマホアプリ案件ですよと言えばまだ良かった。それならそれでそれが好きな人が買うし好きな人どうしで紹介するし、そのコミュニティができるのだからそれでいい。あたかもこれがFX投資スキルであるかのうような言い方は控えて欲しい。そのように思うわけです。

 

最後に

エセ小説を最後までお読みいただき、ありがとうございます。

 

本文中のとおり、セミナーやセミナー参加者、アプリを批判する記事ではありません。それが目的でもありません。

全ての投資セミナーが私の体験ケースに当てはまるとは思いません。良いセミナーもたくさんあると思います。しかしそれは潜入してみないと解らない事でもあります。

 

今回の私の体験記が少しでも参考になれば幸いです。

 

次の土曜日、あなたも経験する可能性があるのですから。。

<ここでトワイライトゾーンのBGM>w

 

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