再帰性理論とは?
「再帰性理論」とは、「人の見方が相場を動かし、動いた相場がまた人の見方を変える」という、ジョージ・ソロスの考え方です。
相場の説明として知られていますが、トレード中の自分自身にもそのまま当てはまります。
トレードは、相場と自分で成り立ちます。
今回は、相場に潜むループ構造・自分に潜むループ構造をメタ認知してトレードに活かす。私が根本的に意識している内容のお話です。
ジョージ・ソロスの再帰性理論
ソロス本人は、2つの柱で説明しています。
| 柱 | 中身 | 出典 |
|---|---|---|
| 可謬性(かびゅうせい) | 参加者の見方は、現実とぴったりは一致しない | ソロス本人の論文(2014年) |
| 再帰性 | そのズレた見方が、行動を通じて現実のほうを変えてしまう | 同上 |
市場では、見方 → 売買 → 価格 → 見方。これがぐるぐる回ります。

動くのは価格だけではありません。動いた価格が、価格の元になるはずの実体(企業の業績や景気)まで変えてしまう、というのがこの理論の面白いところです。
ソロスは、見方と現実が離れていく向きに回り出すと、はじめは一方向に勢いがつき、やがて反転して逆向きに勢いがつく、と書いています。バブルと、その後です。チャートで言えばブレイクアウトからオーバーシュートの動きに近いでしょう。これは効率的市場仮説でも説明がつきます。

相場ではどう現れる?
チャートを動かすのは材料(ファンダメンタルズ・指標発表など)であるが、「そのチャート自体も材料になり得る」と、このブログでは何度か書いてきました(一番重要な時間足はどれか)。
上がる → 上がったチャートを見て群衆が買う → さらに上がる。
自分の尻尾を追いかける犬のようなものです。
実例をひとつ。2024年春の円安です。
- 滝田洋一氏は、円安が円安を正当化する循環を「再帰性」で説明し、4月29日の介入を、そのギャップを叩いたものと書いています(新潮社 Foresight・2024年5月8日)
- 財務省の公表では、4月29日に5兆9,185億円、5月1日に3兆8,700億円の円買い(財務省・外国為替平衡操作の実施状況)
2026年7月には、日経のコラムがAIブームをこの理論で論じました(日本経済新聞・一目均衡)。
1987年の著書(邦訳『ソロスの錬金術』)で世に出た考え方が、いまも現役で使われています。
Q:なぜトレード中は冷静になれないか
A:当事者だからです
ここからはソロスの説明ではなく、私の当てはめです。
例えば、
怒っている最中に、怒らない事は不可能です。だって今、怒ってますから。感情には抗えません。
トレードで言えば連敗中やチャートの乱高下中に冷静さを保つのが困難な状況に似ています。だってお金減っているし、平生を保ってみても内心穏やかじゃない筈です。
ただ、他人の喧嘩を見ているだけなら比較的冷静になれます。他人事だし、自分は怒ってないからです。
ここでは感情のぶつかり合い”喧嘩”を例に挙げて、中で起きていることを分解します。
- 相手に「このスットコドッコイ」と言われた(発言・発声は事実。真意は不明)
- 「こいつはオレのことをバカにしている」と受け取る(受け手の想像)
- 言い返す。相手も同じように受け取り、言い返してくる
- 誤って解釈した事実をもとに、新しい現実が出来あがる
なんのこっちゃ解らないと思うので、順を追って説明します。
図にすると、こうなります。


図2は図3のように書き直す事ができます

可謬性と再帰性と、同じ形です。
「相手」を「相場」に置き換えてください。逆行したローソク足1本は、事実としては1本の足です。そこに意味を足しているのは自分のほうです。
自分を外から見る練習
- 喧嘩を思い浮かべる:腹の立つ相手との言い合いを、できるだけリアルに。相手の表情、自分の手の震えまで。
- 視界を引く:喧嘩している「自分と相手」の両方を、少し離れて眺める
- もう一段引く:眺めている自分ごと、さらに後ろから眺める
- その外側も回っていると知る:眺めている自分も、ループと影響し合いながら次の現実へ進む
なにを言っているか解らないと思うので、順追って説明していきます。
ステップ2から先を、図で追います。

外から眺めると、「自分は怒りすぎだ」と気付けます。
ただ、気付いた自分は、喧嘩している自分と同じ一人です。気付けば、言い方が変わります。言い方が変われば、相手の反応が変わり、現実が変わります。その変わった現実を、また眺める。
眺める → 言動が変わる → 現実が変わる → また眺める。喧嘩の中と同じ手順が、ここでも回っています。見ている自分も、回す側の一人です。見ている自分はあくまで想像の中の自分です。

そこで、もう一段後ろから、この繰り返しごと眺めます。
見えてくるのは、一回の言い合いではなく「型」です。「自分はいつも、言われる → 受け取る → 言い返す、を同じ流れで回している」。

型に気付いた自分も、やはり同じ一人です。型に気付けば、やり方を変えます。席を外す、言い返す前に一呼吸おく。すると、ループの回り方そのものが変わります。その変わったループを、また眺める。
型を眺める → やり方が変わる → ループが変わる → また眺める。一段上でも、同じ手順が回っています。

安心してください。私もワケ解りません(笑
初心に帰ってこのループ構造を比べてみます。
シンプルに考えます。
図3と図7を並べてみます。

フラクタル構造というだけで、それぞれのループは同じ形です。
何段階メタを重ねても、同じ形のループが出てきます。では、いくらメタ認知しても抜け出せないのでしょうか。
答えはイエスであり、ノーです。
抜け出せない、というのは本当です。どこまでメタっても、眺めている自分はループの中にいます。完全な外側はありません。
それでも、メタる意味はあります(メタるってなに?)。一段引くたびに、言動は実際に変わっているからです。図5で見たとおり、眺めれば言い方が変わり、現実が変わります。ループは消えませんが、回り方は自分で変えられます。
抜け出すのではなく、回り方を変える。そのために一歩引くのが、このメタ認知練習です。
当時の私も、ここで「そろそろ頭から煙が出てきました」と書いています。図はこれ以上増やしません。
トレードでやる事はひとつ。一歩後ろに立って、チャートと、それを見ている自分を眺めることです。
メンタルだけでは足りない
メンタルは石油のようなものです。着火する道具と、マッチを擦る行動が無ければ、何も生みません。
OCOやIF-DONEも道具です。睡眠中のチャート監視を、根性でやる事はできません。
そしてこの「外から見る」メタる役(メタるってなに?)も、道具に任せられます。いまはトレードの記録をAIに渡して、自分で気付いていない負け方を聞きけます。そうする為の道具TV5もあります(100%自分で気付けない負けパターンを見つける方法)。
知ったら、いったん忘れる
トレード中にこんな事を長々考えていたら負けますw
こういうのは単純化しておいてください。
例えば、100+57 = 157 ですよね。簡単です。
では 98+57= は?
ちょっと面倒な計算のように思いますが、最初の簡単な計算結果の157を利用して、2を引くだけです。
要は98 を 100 と考えて(丸めて)、あとから 2 を引くという事です。相場も、学んで膨らんだ知識は小さくシンプルに戻します。
知っている人と知らない人、上級者と初心者が、同じ行動「エントリーしない」を選ぶ事があります。ただ、行動は同じでも中身は別物です(FXに向いている行動・いない行動)。
決めた事を続ける工夫は、こちらに書きました(トレードルールの守り方)。
よくある質問
再帰性理論を学べる本は?
ソロス本人の『新版 ソロスの錬金術』と『ソロスの講義録』(講談社)です(リンク先は Amazon・広告)。予備知識なしで読むと挫折しやすいですが、先にこの記事をここまで読んだあなたなら大丈夫でしょうd
可謬性とは?
「人の見方は、現実と完全には一致しない」という前提のことです。自分の相場観も、他の参加者の相場観も、どこかズレています。
再帰性理論で相場は予測できますか?
確定的な予測は出せません。ソロス本人もそう書いています。参加者の見方がズレていて、そのズレ自体が相場を動かすからです。使いどころは、相場と自分の「偏り」に気付くことです。
まとめ
- 再帰性理論=見方が相場を動かし、相場がまた見方を変える
- トレード中の自分も、同じループの中にいる
- 一歩後ろから眺める練習をしておく
- 知ったら、いったん忘れてシンプルに戻す
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
この記事は、2015年の連載「メンタルとソロスの再帰性」(全4話)を1本にまとめ直したものです。9年前の記事ですが、当時から重要視していて、今も肝に命じている内容です。本質的な事は今も昔も変わりません。旧記事に大事な内容が埋もれてしまわないよう書き直しました。まとめにあたって出典との相違がないかAIによるファクトチェックを行い私が最終確認しています。
