「押し目を買わず戻りを売らず」
ウォール街のグレートベアことジェシー・リバモアはこれを相場判断の重要な原則のひとつとしてあげました。
市場にトレンドがある場合、一時的な調整や上げ下げがあってもそれを売買の機会とみなさず、トレンドに逆らったエントリーはしないという考え方です。
ジェシーは、押し目買い/戻り売は必ずしも成功するとは限らず、それが単なる調整局面なのか、それとも本格的な下落トレンドの始まりなのかを判断することが重要であると主張しました。
彼は多くの投資家が押し目買い/戻り売りで損失を被っているのを見て学んだと言われますが、近代トレードにおいて押し目買い・戻り売はもはやトレードの鉄則ともいえるテクニックです。
なぜ歴史上稀有な大投資家と現在のセオリーが異なるのでしょうか。
時代の相違と、本質の一致
故ジェシーに真相を聞く事はできませんが私の見解では、ジェシーの考えと現代の鉄則の相違は、時間軸のフラクタル構造の中におけるトレンド判断の違いと考えます。
今も昔もトレンド把握が重要ですが、どの足(タイムフレーム)のトレンドに注目するかでエントリー判断は異なります。ジェシーの時代、まだパソコンによるテクニカル分析は無く、ティッカーテープというコンピューターから出力される価格情報を自分で黒板に書き出して数字の一覧表とグラフを作成しトレンドを判断していました。一説に彼は外出中でも市場を把握する為、数人の助手を雇って黒板にデータを書き写していた言いますが、当然1分足など作成できる筈もなくメインに活用したのは日単位の寄り付きの始値と引けの終値だったと推測できます。ティッカーによるリアルタムデータも活用していたましたが、現代のようにスマホやPCを使った即時注文システムがない以上、細かすぎるデータはあまり意味をなしません。
そこで、確実性が高く把握、推測できる大きな時間足、つまり大トレンドを重視したのではないでしょうか。このように考えると、大トレンド以下の小さな波は無視して問題ありません。むしろ下位時間足での判断が大トレンドの判断を狂わせたり遅らせたりする結果になりかねません。その結果、小さな押しや戻りに判断を惑わされず本流トレンドに従う事こそ重要であるという意味で、冒頭の戒律を実践したように思います。
この事は、彼が本質的にトレンドを重視した戦略家、トレンドフォロアーであった事を伺わせます。
一方で彼はグレートベアの異名にあるように空売りを得意としました。この事は彼が相場の転換点を捉えるのに卓越していた事も示しています。経験からそのトレンドがホンモノか一時的な調整か見極める嗅覚に長けていました。トレンドの転換点で本トレンドを把握しそのトレンドに従うのであれば最強ですね。
結論
- トレンドに逆らってはいけない
- トレンド把握が大事
一見、今と昔で矛盾したように思えた『押目を買わず戻りを売らず』もこうして考えるとトレンドの重要性というより大きな本質にカテゴライズされるのではないでしょうか。
ねぇ、ジェシー。そうなんでしょ?
今は黒板なしでトレードできるようになりました。ジェシーならどう使うんですかね。
このホンモノニセモノのトレンド把握、トレンド転換の見極めこそ、私が重視するダウ理論なわけですが、ジェシーはこれをツールどころかロウソク足も無い時代に実践していたのですから、まさにグレートです。
関連リンク
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。