同じチャートを見ているのになぜ判断が異なるか
「3つの船、3つの目的、3つの船長。これは偶然ではない。これは目的だ。」
「2つの船、2つの目的地。これは偶然とは思えない」
映画マトリックスでこんな台詞がありました。
同じ映画を観ても印象に個人差があるように、同じチャートを見ても、同じ判断にはなりません。
何をどこまで読み取るかには差が出ます。
何をどこまで読み取るかで差が出ます。
今日の話でそのニュアンスをつかむきっかけになればと思います。
人罪
先日、コンビニで立ち読みをしてきました(出張みたいに言うな)
某漫画の中でトレードに通ずるセリフがあったので紹介します。
いい歳こいて漫画をしかも立ち読みしている事もそうですが、恥ずかしいので漫画のタイトルは伏せておきます。
ここでは主人公の名前を、イニシャルと伏字を用いて「J○J○」とさせていただきます。
主人公のこのセリフ。
よく観察するんだ。
観察とは見る事でなく観る事だ。聞くことでなく聴くこと事だ。
月並みな言い回しかもせれません。
「人材でなく人財が必要だ」みたいな。
あいつなんか「人在」だ、いやむしろ「人罪」だなんて、
同音異義語の言葉あそびを言いたいのでなく、人によって感じる・理解するレベルが違うということです。
奇妙なストーリー
(※ぜひ、FXと結びつけながら読んで下さい)
J○J○は仲間1人と共に、ある人物を探しています。
長年完全犯罪を続け、今もどこかに潜んでいる殺人犯です。
手掛かりは現場に残された「コートのボタン」ひとつ。
犯人像は想像がつかず、雲をつかむような状況です。
そんな中、町の洋服仕立て屋に出された「同じボタンのコート」を発見します。
あと一歩のところでコートの持ち主の名前を知ることができましたが、寸前で何者かにコートを持って逃げられてしまいます。
しかも!
その際、仕立て屋の店主が目の前で突然、謎の爆死!
コートを持ち去る犯人の「腕」が見える!
夕方の店内は、突如、緊張とクライマックスに変わる。
康一くん(JOJOの仲間)「犯人が証拠を持って逃げていく!すぐに追わなくては!」
JOJO「追わなくていい」
康一くん「なぜです!」
jojo「犯人はこの町に住んでいる事がわかった。更に、職業は会社員で独身、身長175㎝前後の普通体型、オシャレに気をつかう25~35歳の男だという事も分かった。今あえて危険を冒してまで追う必要はない。
※)コートのサイズから身長・体型。コートのブランドから服装に気を遣う性格と年齢層がわかる。
妻がいるなら、わざわざこの程度の修理を仕立て屋に出さないので独身である。
何十年も完全犯罪を続けている狡猾な奴だから、コートを見た我々の事も殺害しようと必ず考えいてる。
追わなくていい、のでなく、正確には、追うことができないのだ。
」
と。
同じ環境、異なる判断
この話の何がFXに通ずるか。
同じ状況下で、同じ目的を持ちながら、二人が取ろうとした行動も下した判断は真逆でした。
この違いは何か。
高い観察眼と基礎知識、これらを維持する記憶力と情報を結びつけるセンス。すなわち優れた洞察力と回転の速さ。
では、なくて、、もちろんそれも必要ですが、
注目すべきは冷静さや客観性です。
康一くんとの対比があるので解りやすいですが、
目前で、店主が爆死、手掛かりを盗まれ、逃げていく犯人。
康一くんには”このチャンスを逃してはならない”という焦りの心理状態が伺えます。
手掛かりほぼゼロの状態から、手の届く距離に犯人が現れたという突然のギャップもあります。
作画での康一くんは汗だくで焦りまくっています。
康一くんは ”今すぐ犯人を追う事が最良” という判断を下している訳ですが、
これは感情に支配された行動の決断です。
「行動の命令」を出しているのが「感情」だと言ってもよいです。
この状況で自らの感情を否定して、行動を変えるのはかなり難しい筈です。
感情が無防備なままこの状態に陥ったら、自主的には、気づくのも修正するのもほぼ不可能でしょう。
一方、ジョジョは顔色一つかえず冷静にその場を分析しています。
目の前で起きた事実、犯人の行動、店内の様子・・・、過去を分析し、今に結び付け、
犯人の次の行動を予測して、自らが”やるべき事/やらざるべき事”を取捨選択する。
理性によって導いた答えは康一くんのそれとは逆です。
これは、
「行動の命令」を出しているのが「理性」だと言ってもよいです。
JoJoの分析力がすごいように感じますが、冷静に考えれば、康一くんにも同じ分析ができるはずです。
なぜなら、基礎知識は必要ですが、コートの大きさから性別や身長を予測する事は誰にでも可能だからです。
ゆっくり考えて良いなら・正着を知った後なら、誰にでもほぼ同じ推理ができるはずなのです。
つまり肝は、分析力や判断力よりも、冷静さにあると言えます。
これらが、JO太郎の一言、「追わなくていい」に、集約されているのです。
康一くんはどちらかというと優等生キャラです。もともと知識力はあるので、
冷静な状況なら、康一くんも同じ判断を下した可能性は高いでしょう。
つまり、冷静さを失うと、同じ人間が同じチャートを見ても、同じ判断にならないのです。
これは偶然でなく、必然なのです。
トレードは一日してならず
「冷静さ」は、知識と違って、記憶して引き出すという事ができません。
これを鍛えるには経験と訓練が必要です。
現代のネット社会では知識はすぐに得られますが、経験は徐々(じょじょ)に積む事になります。
ただし、冷静さも経験を積む修行期間も、知識や他のアプローチによって補ったり短縮する事は可能です。
知識より冷静さ→冷静さを鍛えるには経験 →経験を補うのは知識→知識より…
循環論法やトートロジーのように思えますが、スパイラル構造、好循環、相互関係といった方が良いでしょう。
時系列的な繋がりだけでなく、そこに同時にあって、シナジーも発揮します。
これらは別物なのですが、同じ目的を達成するために使うという事です。
感情の反対は理性です。
人間にとって感情は悪ではありませんが、トレーディングにとっては邪魔です。
感情を抑えるのが難しいなら、理性を高めると考えても良いかもしれません。
さて、やっとFXの話になりますが、、、
「今エントリーしなくては!」
「しなくていい。」
「なぜですか!」
「しなくていい」を実現できるのは、知識と経験で作られた冷静さと客観性ゆえです。
「何もしていない」「できなかった」とは違います。
ここでは、同じ行動・同じ結果でありながら、行動原理が違うのです。
ザクとは違うのだよ。 ザクとは。
(漫画違うがな)
康一くんと承太郎の違いを自分のトレードに例えて考えてみると、何かが”観え”てくるかもしれませんよ。
自らに訊き、自分を診る事ができたら、それが一番ですよね。
※解る人だけ。ちなみに文字は自作です。
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
いつもmoreさんの記事には関心させられまくりですm(__)m
私自身、何年もFXをしてますが未だに感情トレが多くて、先週末も雇用統計でヤられました…
「何もしない」と「出来なかった」は人生のチャレンジにおいては同じ意味だと思っていましたが、まさかトレードはその逆だとは…そんな事を考えもしませんでした^_^;
理論的にかつ明確な記事に感服しっぱなしですが、毎回楽しみにさせて頂いておりますm(__)m
これからもよろしくお願いしますm(__)m