浜辺の美女問題
海辺で10人の異性とすれ違い、その内の誰かに告白しようとするとき何人目で告白するのが良いでしょうか。
一人目で告れば後の9人の中にもっと好みの異性がいる可能性を逃します。(機会損失)
かといって10人待っても一人目の異性を超える人とは限りません。1人目を逃した後悔にさい悩まされるでしょう。
別名秘書問題とも呼ばれるこの問題は数学的な最適化問題です。これは求職者との面接を順番に行って最高の候補者を見つけながら、面接数を最小限に抑える意思決定プロセスをモデル化したものです。
※厳密には美女問題と秘書問題は若干異なります
基本的なルールは下記のとおり
- 採用するのは1人だけ
- 相手の質は会うまで解らない
- 採用を決定したら取り消しはできない
最適解
秘書問題
解は次のとおり
- 4人目に会うまで決定を保留し4人目以降はそれまでに会った候補者全員と比べてより優秀ならその時点で即決
あなたが面接官ならこの方法で、面接プロセスを最短化した中で成功確率を最大化できます。
美女問題
告白の美女問題と採用の秘書問題で違う点は遡って決定できるか否かです。美女問題の場合、告白しなった異性に対して後からコクりにいくのは失礼なので、追いかけて戻って告るのはNGとします。
この場合の解は次のとおり
- 始めの3人はどんなに好みであっても告らない
- 4~5人目はそれまで見た中で1位であれば即告る
- 6人目はそれまで見た中で2位以内なら告る
- 7人目はそれまで見た中で3位以内なら告る
- 8人目はそれまで見た中で4位以内なら告る
- 9人目はそれまで見た中で5位以内なら告る
- 10人目はもう後がないので告る
補足
秘書問題はプロセスを最小化するモデル、美女問題は失敗を最小限にするモデルとも言えるでしょう。ただ、これらは有名な古典数学問題であって専門家でない私からの解法説明は難しいので興味のある方はリンク先でご参照/ご確認ください。(参考:wiki 秘書問題)
今回私が言いたいのは、これを踏まえて、次の事です。
トレードへの転用
エントリー後の利食問題
ポジションが利食目標に達しました。すぐに利食うのが良いでしょうか。
あるいはポジションがフェイバー(含み益)になった時点ですぐに利食うべきだったのでしょうか。
すぐに利食えば確実な利益をゲットできますが後の青天井を逃す可能性があります。
かといって今利食わなければ反転して損失を被るかもしれません。あのとき利食えば良かったと後悔にさい悩まされるでしょう。
回答案1
- 利食目標値(TPターゲット)に対し、達成率37%程度になったら決済準備に入る
- 値が順行する限りSL値をトレールし続ける
パターンA:TPターゲットに達したらTPする
パターンB:TPターゲットに達した時点で新たなTPターゲットを設置し、これを繰り返す。※つまり基本的にはトレール決済(SL)されるまでホールドする。TPを設置するのは急な値動きに対応して決済する為。
補足解説
エントリーポイントを0(ゼロ)、利食値を+100とした場合、価格が+37以上になったら利食準備に入ります。その後わずかでも逆行するなら決済しポジションを解消します。実践に応用する場合は価格というより4本値のいずれかを採用するのが良いでしょう。4本値を採用する時間軸は各自の手法に使用しているものを採用します。
相場は美女問題と違って「○○人」といった制限がないので利食ターゲットを限界値に設定しました。エントリー(0)からTP(+100)までの100を限界値とした場合、37%地点が美女の4人目に該当します。
※「+37(37%)」には数学的根拠があります。が、説明は長くなりそうなので興味があればまた別の記事で。今回は戦略的な面に注目してください
回答案2
- エントリー=0,TP=+100、SL=-30、とした場合、価格が+18以上になったら利食準備に入る。以下同様。
補足解説
先程はエントリー値~利食値を100としましたが、本ケースでは損切値~利食値を100としました。
何を全体値(100)にするかの違いです。先述のとおり相場に「〇〇人」という限界値も全体値もないので、プレイヤーのトレードスタイルに合わせて相対的に決める必要があります。
ここでは130を100%として計算し、130の37%で48.1、損切値の-30に48.1を足して、+18.1 ≒ +18 、エントリー値から+18の地点が4人目に該当します。
先程の例ではSL値が考慮されていない為こちらの方がより解法に近いと思います。
トレードチャンスのエントリー問題
保有資金30万円。1度のトレードリスク3万未満にしたい考えです。つまり最悪のケースでは最大トレード回数10回という制限付きです。チャートにトレードシグナルが出ました、過去最高のシグナルではありませんが最低とも言えません。当然ダマシかホンモノか解りませんが、もちろんエントリーしていいですよね??
今月は物入りなので負けたくありません。もっと良いシグナルが出るまで待ちたい気もします。しかしエントリーを見送ったり逃した場合もうトレンドに乗れない可能性があります。次のチャンスはしばらく来ないかもしれません。シグナルが出てエントリーしなければトレードになりませんが、次のシグナルまで待っても良いでしょうか。シグナルが出た際必ずトレードしなければならないでしょうか。
回答案
ここまできたら大体察しが付くと思いますが、
- シグナルが3回出るまで見送り、4回目以降はそれまで出たシグナルより信頼度が高いと判断すればエントリー
補足解説
今回は10回という明確な限界が存在します。これを10人の美女に見立てて3回までは見送ります。その後から勝負する事で失敗を減らし期待値を高める事を期待できます。
この問題の鍵
この数学問題の詳細は専門家にお任せしますが、この問題で私が重要な着眼点だと思うのは「俯瞰」「全体」を見るという事です。
今回の問題では予め10人の制限として設定しましたが、本来、相場自体にはトレード回数などの制限はありませんよね。この為今回のトレード結果から次回のトレードを考えるという場当たり的思考に陥りがちです。この問題で面白いのは、まず10(全体)の中のどこに最高値(1位)の美女がいるかを考えます。10の中の相対的1位は必ず存在します。そして10回の内の一回あたりに1位に出会う確率は1/10(10%)。これを期待値的な考えで言うと、1回あたり、1/10美女と遭遇しています。仮に1位の美女の美女度合いが100、その他の美女の美女度が全員ゼロだとしたら、平均美女度10の美女が10人いるという事です。
ではこの時、始めの3人の合計美女度は想定何点でしょうか。始めの3人がどのような順番で現れるか解りませんが、確率論では平均美女度10点×3人=30点です。3人分の平均は当然10点。もし4人目が過去3人より良いのであれば想定された3人の平均点(=10点)より良い可能性が高いという事。これにより平均以上の成果をゲットできると考える事もできます。うん、ややこしい。
もっとぉ!
もっと!、もっと詳しくぅ!どうしても美女をゲットしたい!という方にもう少し説明。
10人の美女それぞれに100,90,80,70,60,50,40,30,20,10点を付けたとします。失礼ですよね。解ってます。女性の方は男性のイケメン度や経済力に置き換えてください。最低点が10点、最高点は100点です。
※数学の古典問題が”美女”と銘打っている為、美女と表現しています
全員の合計点は550、平均は55点。つまり、10回の試行回数の内1回あたりの平均美女点は55点。これは遭遇する美女点の期待値でもあります。
また、もし1人だけに会う場合でその1人が確実に100点美女の場合、一発一中なので平均点は100点=期待値1とします。今回は10人の中の1人なので、100点美女1人だけを引き当てる期待値は0.1です。
仮に始めの3人で100、90,80の3名に出会った場合、あなたは最高の美女を逃すことになります。さらに4人目はそれまでに会った中で1位が条件なので4人目に70点が来てもスルーします。5人目60点が来ても同様に決定できません。6人目はそれまでの2位が条件なので誰が来てもスルー。と、続けていき、もし100,90,80,70,60,50,40,30,20,10の順に出会った場合は、最後の1人の10点美女でフィニッシュになります。ただしこれが起こる確率は1/3,628,800。飛行機墜落率(1/200,000)と比べても18倍くらい無い数字です。あなたが10点を引く間に飛行機は18回墜落する計算です。
10点の人との本来の遭遇率10%(1/10)よりかなり良いです。この事から大きなミスを回避できる可能性が高い上に、可能な限り最高点を狙えると言えます。
逆に、始めの3人で10,20,30と出会った場合はどうでしょうか。この場合4人目は誰が来ても即決になります。4人目以降の残りの美女は全員40点以上なので最低40点以上が確定されます。また、残りはワースト3を除いた7名である為、平均点は70点({550-(10+20+30)}/7)。本来の平均点を上回ります。残り7人の中に100点美女がいる確率は1/7(期待値0.14)なので、本来の1/10(期待値0.1)より40%良いです。この事から、最も良くない状況を回避した上で、最大効果の期待値も上げていると言えます。この話はモンティ・ホール問題に似てますね。
私のやり方
上記はあくまで回答案であり、推奨したり利益を約束するものでもありません。浜辺の美女問題を使った例え話です。
が、利伸ばしに関して言えば実は私はこれに非常に近い内容です。あちこちの記事で述べているので詳細は省きますが、私は決済(エグジット)に2段階の考えを持っています。美女で言えば、3人目と4人目のあたりの事です。日銭を稼ぐ利確の堅実性とチャンスを活かす利益の最大化はトレーダーを悩ますジレンマのひとつです。このどちらかを選択するのではなく両立するのが好ましいわけですが、この2つを交互に実践したりその都度選んで実行する方法は複雑になる為初心者では判断が難しくあまりうまくいきません。そこで、2つの方法を使うのではなく2つの方法を重ね合わせたしたひとつのやり方として、本記事の解法が役立つのではないかと思います。最大利益獲得だけを目指すなら10人目まで待つのが一番確率が高いですが同時に何も利益を得られないケースも増えてしまいます。かといって毎回1人目でOKしていたら数年来の大相場を逃す可能性大です。
この事はなかなか理解されていないように感じるのですが、二兎を追って二兎とも得ろとは言ってません。二兎それぞれを半分ずつ気にして、どちらも追えるような立ち位置に身を置く、という意味です。フットワークです。柔軟性です。柔軟でありながら規律には従うんです。厳密な柔軟性のある規律なんです。余計解り辛いですかね?w
それにこの話、なんの話でしょうか? テクニカルや資金管理の話とも微妙に違いますよね。メンタルの話とも違います。全て少しずつカブってますけど。だから語られにくい内容でもあると思うんです。これは最適化問題を利用した、戦略や戦術面の話です。なので全てに関わっているんです。あまり語られないこういう話、重要だと思っています。今の時代、テクニカルの話は調べればすぐわかります。誰でも調べればすぐわかるということは、誰でも説明できる/誰でも書けるという事でもあります。誰も説明して無い事は、説明できませんからね。(今日はややこしい話多いな)
もちろん私のやり方や考えが全てではありません。
でも、今回のようなテーマを元にトレードを考えてみるのも面白いと思いませんか?
美人な秘書を浜辺で面接する場合はどうしたらいいんですかね?(いっしょだよ)
少子化MAXの昨今、東京都よろしくAIマッチングシステムなど全世代で利用者数は上昇トレンドみたいですが、お相手に「あなたは3人目なので保留です」とか言わないように気をつけてくださいね!
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
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ありがとうございます。何かをゲットした気持ちはないですが、とても大切なことを考えている山本先生(FXmt先生)のお話を聞いて、ちょっと充実した気持ちです。
先生のスプレッドと残り時間表示アプリは私の取引の必須アイテムです。本当に感謝しています。16年目でやっと週計プラスになり始めましたので、気持ちが少し落ち着いてきました。これからは先生のブログを時々覗いて勉強させていただきます。2024/06/17 YKK